「身体が硬いから腰が痛い」の嘘と本当
「昔から身体が硬くて、前屈で床に手が届かないんです。だから腰痛持ちなんですよね。」 これは、セッションの最初によく聞くフレーズです。 確かに、身体が柔らかい方が怪我をしにくいというイメージは強く根付いています。 腰痛を治すために、痛みを我慢して毎日ストレッチをしている人も多いでしょう。 しかし、身体の柔らかさは本当に腰痛の特効薬なのでしょうか?
なぜ起きるのか
【研究】 「柔軟性の欠如」と「腰痛の発生」の関係を調べた数多くの研究がありますが、実は「身体が硬い人の方が腰痛になりやすい」という明確な証拠(エビデンス)はあまり見つかっていません。 むしろ、関節が緩く、過剰に身体が柔らかい人(過可動性:ハイパーモビリティ)の方が、関節を安定させることができずに腰痛や関節痛を引き起こしやすいという報告もあります。 重要なのは、単なる「筋肉の伸びやすさ(柔軟性)」ではなく、関節を狙った通りに動かし、必要な場面でピタッと止めることができる「モーターコントロール(運動制御能力)」だと言われています。
僕の仮説・現場感
【僕の仮説】 現場で身体を触らせていただくと、確かに「股関節周り」がガチガチに硬く、そのせいで腰に負担がかかっている方は多いです。 しかし、そこを無理やりストレッチで伸ばそうとすると、筋肉は「切れてたまるか!」と防御反応を起こし、さらに硬くなってしまう悪循環(伸張反射)に陥りがちです。 僕にとって、その硬さは「身体が腰を守るために、わざわざ固めてくれている(代償している)」状態に見えます。 不安定な腰を守るために、周りの筋肉が必死にギプスを作ってくれているのだとしたら、それを無理に剥がすのは逆効果かもしれないと思うのです。
今日試せること
「筋肉を伸ばす」のではなく、「脳に安全を教えて、緊張を解く」というアプローチを試してみませんか。
□ 動作(動的ストレッチ) 痛みを我慢して同じ姿勢をキープする静的ストレッチよりも、関節を痛みのない範囲でクルクルと回したり、ゆらゆら揺らしたりする動的ストレッチを試してみましょう。
□ 呼吸 ストレッチ中に息が止まっていませんか?「痛い!」と思った瞬間に息が止まると、筋肉は硬直します。深く息を吐きながら、心地よい範囲で止めることが最も効果的です。
□ 意識 「床に手が届くこと」をゴールにしないでください。「昨日よりも少し身体が動かしやすい」「関節が滑らかに動く気がする」という小さな感覚の変化を大切にしましょう。
まとめ
身体の硬さや柔軟性は、個人差が大きく、筋肉の性質や骨格、神経の緊張状態など、非常に複雑な要因で決まります。 だからこそ、「硬い自分はダメだ」と責めたり、痛みを我慢して無理に伸ばしすぎなくてもいいと思っています。 自分の身体がなぜ今、硬くなろうとしているのか?その声に少しだけ耳を傾けて、無理のない範囲で動きの質を探究していきましょう。